「英会話」というものの変質と林真理子の変容
本家ブログ、随分とお休みしておりました。「twitter」と「独酌日記」は更新するようにしていたんですが……随分書きたい事を溜め込んでしまった。木嶋佳苗容疑者のこと、そして押尾学被告のことなど、ちょっとこれから書いてみようと思う。
さて、昨日のつづき。『週刊文春』を読んでいて気になったことをメモしておきたい。
□林真理子『夜ふけのなわとび』より
有名な評論家の方がこんなことを言っていた。(中略)「この頃の若い人、海外に出ていかないでしょ。ヨーロッパでもアメリカでも、旅してるのは中国人か韓国人ばかりですよ」(さらに中略)「旅行ばかりか留学もしない。僕はよく、海外の大学に行く学生に推薦状を書いていたんですが、この何年かは書いてないもの」(またまた中略)どうして若い人の海外渡航が減ったのか。十年で三十五%も減少した、というのは、やはりすごい変化ではないだろうか。
林さんはその理由を、「高度成長とともに『国際化』という言葉にお尻を叩かれてきた。もっと世界の人たちと、バシバシ英語で対談出来るようにならなくてはダメ、日本人はアピールがヘタ。もっと目で主張しなくては……」と、今まではせっつかれてきたけれど、現状は「いいじゃん別に無理しなくって」というムードになっているから、と読む。
先日私はフト
「今の十代は我々から以前の日本人が抱えていたような『英語コンプレックス』というのはあるのだろうか。英会話を操りたい、などと思っていないように思える。それが『コンプレックス』からの解放かどうかは別として」
というようなことを思い、twitterに書いていたのだった。
私の世代ぐらいまでは「英会話堪能」というのはエリートの象徴のような「伝家の宝刀」だった。「英語が話せる」ということは、単なるスキルというよりも「すっごおおーーーいい!」「かぁっこいいい〜!」ってな精神的昂揚を相手に与える「魔法の杖」みたいな効果を生むものだったように思う。
けれど、今そういう感じってなくなったなー、と思う。それは英語力が全体的に引き上がったということではないだろう。若年層では、「いいじゃん別に英語使わないし」「興味ないし」こんなノリが主流なんじゃないだろうか。心から「英語なんてどうでもいい」と思っているように感じられてならない。
うん、洋楽も洋画にもさして「無反応」みたいだしね。私までぐらいは「あちらのハヤリもの」というのは凄く強い吸引力があった。「知ってないと恥ずかしい」みたいなノリが一部では強かったけれど、今はそういうの全然ないでしょう。それは「無気力」とも違うんだけど……このへん、これから調査してみたいテーマだ。
□林真理子の変容
しかし林さんは本当に「おきれい」になられた。
以前から私は、
「林真理子は6週間に一度『顔』に神が降り、11週間に一度『筆』に神が降りる」
というのを勝手に定説にしていた。失礼な話だ。すみません。いやでも林さんのファンなんですよ私。作品というよりも、「人間・林真理子」のファンなのだ。
「顔」というのは、『週刊朝日』の対談における林さんのスナップのこと。これが大体6週間に一度ぐらい、別人かと思うほど「おきれい」なご面相になる。彼女の表層的美的バイオリズムは6週間の期間をもってアップダウンするようだった。
そして『筆』は『週刊文春』のコラム。こちらも普段は「編集者いっぱい連れて桃見ていい酒を飲んだ」「犬が超かわいくて困っちゃう」「すっごく忙しくて世界股にかけちゃって大変」みたいな内容が多いのだが(それはそれでいいのだ。「スター作家」を林真理子は体張ってやっている。その記録はそれはそれで読みものに値する)、大体11週間に一度ぐらいの割合で、見事な文明論や人間分析、時代を斬る傑出したコラムを書かれる。
大体、そういうペースだった。私は、あれだけ美に拘泥しながらも堂々と「イマイチ」な写真も掲載する林真理子の「自分大好き!」度合いを愛し、そういう「自己偏愛」あふれるコラムも愛していた。
しかしここにきて定説が変わってしまった。林さんの対談フォトは、もう毎回お美しい。「別人かと思うほど」というレベルを「標準」にしてみせた。
しかしそれは、「林真理子」にとって幸せなことなのだろうか。
あの方は今までのように強欲に、さらなる高みを目指し、欲し続けるだろうか。そこが、不安だ。あの人の今の「おきれい」さ加減には、実際的な意味ではなく、「削ぎ落とされた」ものが持つ系の「美」が漂っている。アクが抜けた感じというか、達成感がある。リバウンドの危険がなさそうな雰囲気。脆さが感じられないタイプの美。
それはもう、林真理子であって林真理子ではない。何か他の名前を「襲名」してほしいとまで思う。書くものが変わりそうな予感がするが、今のところエッセイにその兆候はない。
○おまけ・「シネマチャート」から
サム・ライミの新作『スペル』。品田雄吉さんが「これぞ真正B級ホラー」と書き、おすぎさんが「冒頭から名作の香り」と評している。素晴らしい二者二様。
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