『ずっとあなたを愛してる』

12月26日公開



 タイトルがねえ……思いっきり、「ふた昔前のトレンディドラマ」みたいで、「ああつまらなそう」と思われちゃいそうだが、さにあらず。
 クリスティン・スコット・トーマス主演の映画『ずっとあなたを愛してる』(2008 仏・独)が素晴らしかった。胸を打たれた。うん、人の胸を打つ――映画版『沈まぬ太陽』が3時間以上もかけて出来ないことを、この映画は117分でやっている。
 公開は12月26日と随分先ですが、興奮冷めやらぬうち、この感激を記しておきたい。
 姉と妹の久々の再会から物語ははじまる。久しぶり――といっても、少女時代から、お互い母親になるまでの何十年もの間、ふたりは会うことがなかった。会えなかった。なぜか。
 もう公式サイトが準備されているけれど……あらすじを知らないほうがいいと、私は思う。
あなたの隣の家に、この主人公が引っ越してきた。そんな感覚で、この女の「身の上」をそれとなく知っていく――といったスタイルで鑑賞するほうが断然楽しめると思う。
 公式サイト http://www.zutto-movie.jp/


 人間の「こころ」が非情に緻密に活写されている。無駄なシーンとセリフが殆どない。確かな演技者たちの、いい意味でのぶつかり合い。そして優れた演出家による、「そぎ落とし」のある映画。あえてシンプルに、すべてを語り尽くさないことで、より豊かにドラマが語られるという上級な表現がある。
とある「罪」を犯した女。誰にもその理由を語らず、理解してもらおうとも思わない女。けれど彼女自身の人間性は、接するものを和ませる。次第に、彼女のことが好きになる周囲。けれど彼女との「罪」とのギャップに、皆苦しむ。あなたは、なぜ?

 主演女優のクリスティン・スコット・トーマスの存在感! ひとりの人間の歴史をスクリーンに刻み付けて見事という他ない。こういう作品に人生で出会い、そしてやってのけた。幸福にして、素敵な達成感に包まれていることだろう。

 監督のフィリップ・クローデル、これが初監督なんて信じられない……。不勉強にして知りませんでしたが、『灰色の塊』などの本の作者で、日本でも多く出版されているかただそう。
 他にエルザ・ジルベルスタイン(『ミナ』の女の子がこんな立派な大人の女に……感慨無量)などの出演。
 会話劇的なフランス映画が好きな方は是非。



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