『17歳の肖像』


 分からない。判らない。ああ、まーーーーーーーーーったく解らない!
 主演女優、キャリー・マリガンの「魅力」が、私にゃもうさっぱり分からなくて。この女優さん、えらい評判らしいんですよ。本作でアカデミー主演女優賞にもノミネートされ、作品自体も作品賞にノミネートされているんだが……はたして、そんな良い映画だったろうか!?
 まず第1に、この女優さん「可愛い」らしいんだ、世間では。そっから分からない。
 もちろん美醜は主観ですけどね。しかし私には「くたびれた『いとうまい子』」にしか見えなかった。タイトルどおり、16〜17歳の女の子を演じるキャリー・マリガン(実際は25歳)。現在のいとうまい子は46歳。いや、いとうまい子自体は可愛いと思ってます。思ってます。それがさらに「くたびれた」感じがするんだなあ、この主人公。それは単なる「老け顔」、という意味じゃあなくてね。
 もちろん、女優は地顔じゃない。モデルじゃないんだし、造形の美醜はさほど重要なことじゃないのだ。周囲を明るくするようなチャーム、涙したときに溢れ出る情感、そういったものが映像演技者には必要ということは承知の上。
 けど、そーいう点がねえ、この女優さんは弱い。なんか終始モヤーッとした表情ばっかりしてる。イギリスが舞台なんですが、まさにイギリスの空みたいな感じ。
 それは主人公のキャラクターに起因すると思う。若いくせに、えらく恋に打算的なんだもの。筋はいたってシンプル、高校生が裕福な大人の男と出会って恋をする、というもの。


●どーしてそんなにスレてるのか!?

 ある日、彼氏の仕事のダーティな面を知るマリガン。最初は拒絶するんだけど、ちょっとなだめれるとすぐに翻意。
「今のこの生活が楽しいから、目をつぶっちゃおう」
 裕福な彼からはプレゼント攻勢。これにも変にスレてるんだなあ。感謝や感激の念が薄いんですねえ。ああ、よろしくない。そう、ミョーに世慣れたとこがあんだわ、この主人公。
 いよいよ彼との結婚話が進み、マリガンのご両親と会食というその日。男のとある不実が明らかになる。怒り爆発の女の子。申し訳が立たなくて、思わず酒をあおる彼に対して、
「お酒の力を借りて謝ろうとしてるのね」
 なーんて言い放っちゃったりするんだこれが! 17歳の高校生のセリフにしちゃ随分とまあ「あばずれ」じゃあなかろうか。
 恐ろしいことに「オードリー・ヘップバーンの再来」なんて海外メディアでは謳われたらしいんですね。
 めまいしそう。
 その記者、オードリーの映画観たことないんじゃないか!? 確かにオードリーっぽいドレスやヘアスタイルは何度かしてるんだけどさ……とまあ、これはキャリー・マリガンには罪のないこと。
 個人攻撃するつもりはないんですが、観終わってどーにも「?」だらけで、苦しくてね。

●笑うと激しく「西田敏行」化

 年上の彼氏にピーター・サースガード。陰のある役、気持ち悪い役、目が笑ってない役をやらせたらピカイチの俳優。
 私、「この人が出ている映画はハズレない」というジンクスがあるんです(あの『フライトプラン』も、私にはピーターの不気味な存在感で楽しめた)。
 しかし今回見事にそのジンクスが潰えてしまった。どーでもいいけど、この人「クシャッ」と笑ったとき、すっごく「西田敏行」が入る。並べたいぐらい。ぜひお比べになってみてください。そうそう……彼が「バナナ」を使ったとあるジョークを作中吐くんだが、まあそのおゲレツなこと。それに対する女の子のリアクションもまた、主人公の魅力を貶めるものだった。監督の品性を疑う。
 そうそう、これ1960年代の話なんですね。当時の厳格な女子高の校長役に、あのエマ・トンプソン。これはもう最高。「朝飯前よ!」ってな感じで余裕綽々。自家薬籠中。この映画の中で文句なく楽しめた瞬間でした。

 いや、いいところもいっぱいあるんです。特に……「間」がいいというか。日常、唖然としてしまったり、二の句が告げなくなるような瞬間ってものを、実にうまくとらえた映画だ。そういう「緊張」のあとの「弛緩」が生む、トボけた笑いにこの映画の会話は満ちている。独得の素敵な喜劇的トーンがあるんだけどね。でも、やっぱりアカデミー作品賞ノミニーはうなずけない。
 ああ、今日も小言幸兵衛でした。これもすごい死語だな。


(左がエマ、そして一番右の子がキャリー・マリガン。ポッケに手を突っ込むんじゃない!)

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