佐々木芽生監督にインタビュー

 発売中の『テレビブロス』でインタビューをやらせて頂きました。11月13日から渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開されるドキュメント『ハーブ&ドロシー』を監督された佐々木芽生さんにお話を伺っています。
 これね、いーんですよ。ドキュメントやアートフィルム、とか思ってひかないでほしい。実に興味深い人間を追ったひとつの「映画」です。ちょっと以下読んでみて。

○こんな映画です

 ニューヨークに住む元・公務員のカップル、ハーブ&ドロシー。給料で買える範囲で「うーん、好きだ」「これはほしい!」と心底思えるものだけを30年にわたって集めてきたふたり。


 とにかくギャラリーをまわって、観る。観る。観る。観続けてきた長い年月。彼らが購入した頃は新人アーティストだった面々も、いつしか評価が高まって現在では有名に。
 でも、彼らは売らない。ずーっと住んでる1LDKのアパートは作品でパンパン。1点でも売ればもうそれこそ、大金になるわけです。でも、売らない。「売って!!」と請われても売らない。それはシンプル、ただ、持っていたいから。
 このふたりの作品との付き合い方、素敵なんですよ。もー大雑把で「積んどく」的というか。でも作品に愛情がないわけじゃない。コレクターにありがちな血道あげての、という偏執的なつらい感じは全然なく。
 日々の生活をいとおしみ、夫婦お互いをいとおしみ、清々しさがある。全然無理をしていない。広い家に住みたいなんて思わない。コレクターとしての審美眼を世の中から注目されて有名になっても、名誉欲などみじんもない。ただ作品がアパートの中の手の届く距離にあって、好きなときに触れられれば、それでいい。欲望の大半が素敵な作家をみつけること、その作品にふれること、そして買える範囲で手に入れること、それに集約してしまったひとのよう。うーん……こういう「仙と俗の不思議な同居」ってのもあるんですね。

 もう彼らは、おじいちゃん・おばあちゃん。作品をナショナル・ギャラリーに2000点寄贈することに。それでも作品まだまだてんこもり。全米50の州に50点ずつ寄贈されることに。それでもまだてんこもり……。
 トータルで4500点にも及ぶこの寄贈はアメリカ美術史上でも最大規模なんだそう。ちょっと余談めきますが、ナショナル・ギャラリーの学芸員のインタビューが実に面白い。彼らの家には熱帯魚の水槽があったり、猫が飼われているんですね。そのそばに無造作に並ぶ作品の数々。「水槽が壊れて水浸しになったらどうしよう、あの作品が濡れたり破れたりしたら……もうキュレーター魂が震えたよ!!」なーんて笑いながらいうシーン、もう可笑しくて思わず声に出して笑ってしまったり。

「これはね、3つのラブストーリー。ハーブとドロシー、ふたりのアートへのラブ。それを創ったアーティストへのラブ。そして、ふたりのラブ」これが、映画にてんこもり。

 1/2ページのちいさなインタビューですが、どうぞ読んでみてください。監督はこのふたりの姿勢と生き方にほれ込んで「借金してでも」とドキュメントを制作。「まだアパート、抵当に入ってますよ(笑)」という心意気のひと。粋なひとがいるもんだよ。

 もし興味がわいたら、ぜひ。