引きずった日

 結局、成田屋ショックで熱が出てこの日は使い物にならず…。

 失望感から体調を崩すというのは、人生ではじめて。
 しかも、まーーーーったくの「赤の他人」だというのに。毎月追っかけてたような熱心なファンでもなんでもなかったのに。「居てくれるだけでよかった」というかねえ……「歌舞伎にはなくてはならないひと」と自分の中で強く思っていたことに気づかされる。太陽が隠れたような気持ですよ、オーバーじゃなくて。映画『サムソンとデリラ』のラストシーンのように何かガラガラと倒壊してしまったような…。ガクーッときました。まあ…一日で立ち直ったけども、ね。

 中川某氏が「世代交代を急いで若手をどんどん主役抜擢するしかない」的なことを書かれていたが(ごもっともだとは思っていますが)、自己流でどんどん突き進んだとしても「歌舞伎」になるわけがない。随分と楽観的なことを書くなあと…正直、私はあきれてしまった。悲観は何も生み出さないとは私も思うが、「嫌われてもいいから教える人」というのがいないのに、主役に抜擢してどうするのだろう。
 そこがなければ。
 勘三郎さんの逝去で玉三郎さんがショックを受けておられたのは、そういうことだと思う。

 私は歌舞伎が好きだが、「いい歌舞伎」が好きなんであって「誰かが自分の思うままやりたい放題やってる歌舞伎」などというのは好きでもなんでもない。これからますますそういう傾向が進んでいくように思えてならないのだ。
 
 と……我ながら憎ったらしいことばかり書いますね。(´・_・`)

 ただひたすらに、一連の歌舞伎を襲っている不幸の連鎖が、これぎりであるよう、心から祈る。

 友人が「歌舞伎座を壊した呪いだなんだ言っていた人を軽蔑していたが、もうそういう気がしてきた…」とつぶやいていたが、本当にそんな非科学的な気持ちになってしまった。松井今朝子さんが「一体何人の人柱を」的なことをブログに書かれていたが、本当に「人柱」と私も思ってしまった。「ああ、染五郎さんは間一髪、『捕まらなかった』んだな…すり抜けられたんだな。本当に、良かった」とかねえ、真剣に思ってしまった。あははもうなんという弱気…。
 これ以上何事も起こりませんように。祈るほかない。御守護を。

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○AKB

 世の中はAKBのなんとかさんが坊主になった、ということでここ数日話題になっていた。
 詳細をよく知らないのと、どこまでが「おしごと」なのか分からないので、興味を引かれずにいた。私のツイッター・タイムラインには「シガニー・ウィーバー」「シンニード・オコーナー」「髪切りデスマッチの長与千種」と歴代女ボウズの名前が連なり、私のフォロー人選は間違ってなかったと鼻が高い気持であった。そして私は「ICONIQどこいった」とつぶやいてこの日を終えた。

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○船越家
 
 NHKでやっていた『ファミリーヒストリー』という番組が面白かった。
 船越栄一郎の家族を追ったもの。父で俳優の船越英二、その軍隊時代に同部屋だったという戦友、さらには上官が健在でインタビューに応えられているのに驚く。お二人とも実にカクシャクとされていた。こういう戦争の記憶をもっと生で聞いておかなければ、と思う。
 栄一郎氏の祖母にあたる方が実に美しくて、これまた驚いた。戦前の女優・川崎弘子をもっと瓜実にしたような感じ。氏の母で元女優の長谷川裕見子より美形だと思う。

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 たしか六代目菊五郎の辞世の句は
「まだ足りぬ 踊り踊りて あの世まで」
 だったと思うが(あえて検索せず)、成田屋の胸中や、いかに。
 
立春や 祝う染五の よみがへり
 
 この日は怪我をされて休養されていた染五郎さんの舞台復帰の日でもあった。5か月ぶりと。


春になりたや 梅さきそむる


 合掌。